日本への渡航に関する米国政府の警戒レベルとCOVID-19ワクチンのこと

2021年5月25日

特定非営利活動法人 プロフェッショナルイングリッシュコミュニケーション協会


 2021年5月25日に日本の各報道が一斉に報じているように、米国時間5月24日に日本への渡航について、CDC(米国疾病予防管理センター)は海外渡航健康情報の警戒レベル4(すべての渡航を中止)、国務省も海外渡航安全情報の警戒レベル4(渡航中止)とし、のいずれも最高警戒レベルに引き上げた。

 CDCは5月19日に、海外渡航する米国市民に対してCOVID-19ワクチンの接種が完了しない限り、海外渡航を中止するようにとの勧告を発出していた。 現在、米国においてFDA(米国食品医薬局)から緊急使用承認を得ているCOVID-19ワクチンは、ファイザー社、モデルナ社、ジョンソン&ジョンソン社の3種類のワクチンであるが、上記で述べた「ワクチン接種の完了」とは、以下の状態を言う。


  • ファイザー社とモデルナ社のワクチンについては、2回目の接種から2週間を経過

  • ジョンソン&ジョンソン社のワクチンについては、1回接種から2週間を経過
  •  上記の5月19日付ワクチン接種に関する勧告の後、同月24日に上記のとおり日本に対する海外渡航健康情報のレベルを最高レベルである4に引き上げた。日本におけるCOVID-19の感染状況では、ワクチン接種を完了した人であっても、変異株感染のリスクにさらされるおそれがあるため、日本への渡航を避けるようにアドバイスしている。

     CDCの海外渡航健康情報のレベル4に分類されている国と地域は、5月24日現在で141となっている。インド、ブラジル、ロシアのほか、ドイツ、フランス、イタリアなどの欧州のシェンゲン地域、さらに隣国のカナダもレベル4に分類されている。日本はレベル3(渡航の再検討)からレベル4に引き上げられ、この分類に属することになった。

     ちなみにCDCのレベル3(不要不急の渡航を回避する)に属する国と地域は、タイや英国など23となっている。CDCレベル2(COVID-19感染症による重症のリスクが高まっている)の国と地域は、韓国、シンガポール、イスラエルなど20となっている。感染が著しく抑えられているオーストラリア、ニュージーランド、台湾、香港、ベトナム、そして中国は、CDCレベル1(渡航時にマスク着用、人込みを避け社会的距離の保持、手指消毒の徹底など)に属している(29の国と地域)。

     なお、日本への渡航についてCDCの健康情報レベルと国務省の安全情報レベルのいずれも最高レベルの4としているが、例えば、中国への渡航については、CDCの健康情報では上記のとおりレベル1となっているけれども、国務省の安全情報ではレベル3となっている。日本政府の危険情報と感染症危険情報が異なるのと同様に、必ずしも二種類のレベルが一致するわけではない。ちなみに国務省が中国への渡航をレベル3としている理由は、「中国における法の恣意的執行」にあり、感染状況を理由としていない。

     日本政府は、日本への入国制限に関して、現時点ではワクチン接種の有無で区別する規制を実施しておらず、また外国人の新規入国に関して、全世界を対象に基本的に入国を認めない規制を暫定的に維持している。

     米国政府も、米国への入国規制においてPCR検査の陰性証明の提示や一定期間の自己隔離などを求めているけれども、現時点ではワクチン接種完了については求めていない。

     しかし、米国入国後の各州政府の規制は州によって異なっていることを理解しておく必要がある。州によっても異なるが、特定のサービスを受ける条件として、ワクチン接種完了の証明が求められている場合もある。その一つに、2021年秋学期に向けた米国の大学のキャンパス再開の条件がある。キャンパス再開に向けて、学生や教職員に対してワクチン接種の完了を求めている大学の数が非常に多くなっている。例えば、ハーバード大学も2021年秋学期からキャンパスを再開するにあたり、ワクチン接種を学生と教職員に求めている。そのワクチンに関する内容は、FDAによって承認されたワクチン又はWHOによって緊急使用許可を取得したワクチンのいずれかの接種完了となっている。このことは、5月25日現在で上記に掲げた3種類のワクチン以外のアストラゼネカや中国のシノファームのワクチンも含むことを意味する。ハーバード大学の場合、学生がキャンパスに戻るまでにFDA又はWHOの承認を得ているワクチンではないワクチンを接種している場合、大学のヘルス・サービス部門は、FDAによって承認されたワクチンを提供するとしている。海外からの留学生で米国に入国するまでに大学が求めるワクチンの接種ができない留学生に対しては、大学は当該留学生に対してワクチンを提供できるように計画をしている。

     州によっても、公立私立によっても異なるけれども、基本的には教育機関によって、その対応は異なるので、米国の大学に留学を検討している学生は、連邦政府の入国に伴う各種規制やビザ取得手続きのみならず、各大学のキャンパス再開に向けた方針を確認しておく必要がある。

     5月25日現在、日本政府の米国に対する感染症危険情報は、レベル3(渡航中止勧告)が維持されている。日本政府の海外渡航規制や渡航先各国の入国制限等などについては極めて流動的であるため、引き続き関係する一次情報をフォローしてほしい。



    引用ウエブサイト


    CDC

    https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/travelers/map-and-travel-notices.html


    国務省 U.S. Department of State

    https://travel.state.gov/content/travel/en/traveladvisories/traveladvisories/japan-travel-advisory.html

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