アメリカ合衆国移民税関執行機関
(U.S. Immigration and Customs Enforcement)の
最新の政策と暫定ルール

2021年5月12日

特定非営利活動法人 プロフェッショナルイングリッシュコミュニケーション協会


Ⅰ 最新の政策と暫定ルールのキーポイント

 留学や交流プログラムなどでアメリカに滞在する人たちの入国管理や滞在中の活動を管理監督する連邦政府の行政機関SEVPは、2021年4月26日に下記内容のBroadcast Message(以下「2021年4月SEVP通達」という)を公表している。



「SEVPは、2020年3月に発信したガイダンスを2021年-2022年アカデミック・イヤーにも継続して適用する。この2020年3月のガイダンスは、COVID-19による公衆衛生上の懸念が継続しているため、学校及び学生が規制限度の範囲で遠隔学習に従事することができる旨を規定している。また2020年3月のガイダンスは、米国に滞在しているか海外に滞在しているかを問わず、2020年3月9日現在でアメリカの学校に在籍している非移民の在留資格の学生に適用するものである。」



 2020年3月のガイダンスの内容を把握していないと、2021年4月のSEVP通達を正確に理解できないと思うので、これまでの背景を下記に簡単に解説する。

 昨年(2020年)、留学生のビザ発給と在留許可に関するアメリカ連邦政府国土安全保障省の移民税関執行機関(以下「ICE」という)の指令を巡って、アメリカの大学や州政府などがアメリカ連邦政府国土安全保障省を相手取って訴えを提起するなどの活動が活発化し、混乱があった。

 2020年7月、トランプ政権は、2020年秋学期中(2020年-2021年アカデミック・イヤー)に授業が完全にオンラインで行われる場合、F-1学生ビザ保持者などは米国を離れるべきであるというICEの指令を撤回することに同意した。同時に、ICEが2020年3月に発行した「F-1ビザを保持する学生(及びM-1ビザを保持する職業学生)がアメリカに引き続き滞在することを許可するガイダンス」の効力を復活させたのである。この2020年3月のガイダンスによれば、COVID-19 の影響で学期の授業がすべてオンラインで行われる場合も引き続きアメリカに滞在できる。

 上記で言及したガイダンスの内容は、2020年3月9日時点でアメリカの大学等に在籍している留学生に関することであることを理解していただきたい。

 それでは、新規のF又はMビザの学生については、どのようなに規定されているのだろうか。2021年4月のSEVP通達によれば、次のように規定されている。



「2020年3月のガイダンスに従い、2020年3月9日時点で在籍していない新規又は初回のF及びMビザの学生は、履修するコースが100%オンラインである場合は、2021年-2022年アカデミック・イヤーの非移民学生としてアメリカ合衆国に入国することは、認められない。当該学生が履修科目のいくつかが対面式の学習であるハイブリッド・プログラムを履修する場合はアメリカ合衆国への入国が認められる。」



 上記の内容から、留学しようとする大学の授業実施形態によって、渡米することができるかどうかが異なってくる。渡米できることと大学に入学できることは別であるという認識を持つことは言うまでもない。アメリカに入国できなくても、オンラインで正規の留学が認められ、学士号等のプログラムをアメリカ国外でも受講できるという理解を持ってほしい。

 ハイブリッド・プログラムやキャンパスを再開して対面式授業を行っているアメリカの大学へ留学するためのアメリカ入国は認められている。ただし、入国条件や入国後の行動制限は、国務省などの規制による。

Ⅱ 該当する行政文書

 アメリカの大学等への留学を検討している学生が把握しなければならないアメリカ合衆国移民税関執行機関(以下「ICE」という)の最新の政策と暫定ルールが、本年4月26日に公表されている。その把握すべき文書を以下に掲げる。


A Broadcast Message: ICE Continues March 2020 Guidance for the 2021-22 Academic Year
(2021年4月26日付 Number: 2104-05)

B Frequently Asked Questions for SEVP Stakeholders about COVID-19
(2021年4月26日)


上記文書(英文)のいずれも、インターネット上で公表されている。

Ⅲ 各行政機関の担当任務

 Ⅰ及びⅡで紹介したアメリカ連邦政府の行政文書に登場するアメリカ連邦政府の行政機関の役割分担を簡単に整理しておく。

 査証発給担当は、各国にある米国の大使館・総領事館がその任務を担い、国務省Department of State:DOS(日本政府の外務省に相当する行政機関)の所管である。

 入国管理担当は、国土安全保障省 Department of Homeland Security:DHSの所管である。このDHSの組織としてICE(移民税関執行機関)があり、このICEが入国管理の執行や入国者の管理監督の任務を果たしている。捜査権限も有する行政機関でもある。

 Ⅰに登場するSEVPは、Student and Exchange Visitor Programの略語である。邦訳するならば、「学生・交流訪問者プログラム」となるが、日本語でイメージする「プログラム」と解さないでいただきたい。留学や交流プログラムなどで米国に滞在する人たちの入国管理から滞在管理までの任務を果たすICE内の一部署と理解してほしい。正確に言うと、SEVPは、ICEの一部署であるNational Security Investigation Division (NSID)の一部門 である。

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